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忙人寸語

2010年8月3日

▼「ええかげん」「チャランポラン」「ものぐさ」「まあ、ええやないか」…。先日死去した数学者の森毅さん。多数出版されたエッセイ集のタイトルに並んでいたそんな言葉がぴったりするような柔軟な思考が持ち味だった

▼かつては京大の名物教授。「一刀斎」というニックネームでも知られた。古武士然とした雰囲気で学生に大いに親しまれたことだろうと想像させられる。1980年前後、「ニューアカ」ブームの立役者だった浅田彰さんも教え子の一人だった

▼その浅田さん経由で森さんの名を知り、以来、多くの著書に親しんできただけに、訃報はやはりショックだった。軽妙洒脱な文章が最大の魅力だったが、主張している内容はどれも正論ばかりで、ユーモラスな文章の根底には、意外な硬骨漢ぶりをのぞかせていた

▼特に印象に残るのが教育論。「戦後民主主義の『みんな一緒、みんなが仲間』という圧力は、戦中の軍国主義の一致団結圧力よりずっと強いよ」。ある対談での発言だ。柔軟な批評精神は最後まで健在だった

▼著書などでの評論活動の一方では、テレビにも多数出演。歯に衣(きぬ)着せぬコメントでお茶の間にも親しまれる存在だったが、そうしたマルチな活動を自らも心底楽しんでいる様子がブラウン管からは読み取れた

▼独善に陥ることの決してなかった柔軟な思考には、これからも大いに学んでいきたい。

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