忙人寸語

2010年8月1日

▼歴史好きの「歴女」や、著名人のお墓を訪ね歩く「墓萌(も)え」などの造語が、ここ数年の若い女性を中心としたブームを象徴している。古刹(こさつ)巡りや仏像のファンも増えているようだ。特集を組む雑誌、本が書店でも目立つ

▼この夏、都内で開催中の仏教美術を紹介する二つの展覧会に足を運んでみた。どちらも女性が特別多いというわけではないが、幅広い年齢層でにぎわっていた。仏像のどこに人々は引きつけられるのだろうか

▼根津美術館(南青山)は「いのりのかたち」展。重要文化財の「金剛界八十一尊曼荼羅(まんだら)」をはじめとする密教絵画や来迎図、説話画などが、ホールや庭園の石仏群とともに崇高な美の空間を構成している

▼三井記念美術館(日本橋)の「奈良の古寺と仏像」は、平城遷都1300年を記念した特別展。飛鳥から室町時代の仏像、仏教工芸品の名品が一堂に集まり、その繊細な造形美に魅了される

▼いずれの展示も、信仰によってはぐくまれてきた美の世界が重厚な存在感を見せる。現世では煩悩や物欲に無縁というわけにもいかず、将来は不安だらけ。現実社会を離れ、自分自身を静かに見つめ直すよい機会となりそうだ

▼仏像や仏画の前に立てば、そこには穏やかなまなざしとともに、戒め、教え導く厳格な表情。信仰の対象としても、そうでない人にとっても、何か新しい発見があるだろう。

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