▼朝早く、庭に水をまいていて気づいたが、マンリョウが釣り鐘によく似た白く小さな花を咲かせていた。縁起のよい名前と、赤く熟した果実の美しさからセンリョウとともに正月のお飾りとされる植物だが、花を見るのは初めてだ
▼雨の山道を歩きながら水分をたっぷりと吸い込んだ森の輝きを見ると、さわやかな気持ちになるし、しっとりとぬれた草花には、何とも言えぬ艶(つや)めかしい風情があるが、豪雨となると恐ろしい
▼先日、日光霧降高原を歩いていて激しい雨に打たれた。バスを降りてリフト乗り場へ向かう観光客と分かれ、人けのないダケカンバ林を歩いた。ササが生えた原にアヤメやギボウシ、ホタルブクロがけなげに咲いていた
▼やがて牧場へと通じる道でポツリと雨が落ちてきた。ただの夕立だと思っていた。しかし、それが気休めであることが間もなく分かった。周りの山々が白い壁で隠された。あっという間のことだ
▼土砂降りの雨は猛烈な暑さによってフライパンのように熱せられた牧場の舗装道にたたきつけられると、はじけるように跳ね返り、湯気を立てている。暑い風が襲ってきた。ここに来るまで2度、沢を渡った。沢で降られたらと思うとゾッとした
▼森の土に雨がしみこんでいくさまは命の源を見るようだ。自然の中では人間なんてちっぽけだ。これでもかと降り続く激しい雨。立ち尽くした。