▼ほこりっぽく、少しかび臭いござ敷きの席を思い出す。小さな街の古い映画館。席には傾斜があり、空いていれば横になって、駄菓子をほおばりながら観賞できた
▼小学校低学年だった四十数年前。大好きな怪獣映画とセットで上映していたのがコメディー「てなもんや三度笠」シリーズ。主人公・あんかけの時次郎役として藤田まことさんを知った。白木みのるさんとの凸凹コンビが人気で、面長の顔を「馬」とからかわれる場面が印象に残る
▼スポンサー名を折り込んだ「当たり前田のクラッカー」のフレーズは、脳裏にこびりついている。「当たり前」の言葉を聞くと、今でも反射的に続きが口をついて出る。「何それ?」。いぶかしがる息子たちに、理解させるのはかなり難しい
▼1973年に始まったテレビ時代劇「必殺」シリーズの中村主水が当たり役に。家庭や職場では「昼行あん灯どん」と蔑さげすまれながら、実は剣の達人。悪人を闇に葬り去る姿が、サラリーマンたちの共感を得た
▼88年スタートのテレビドラマ「はぐれ刑事純情派」は、派手なアクションシーンはなし。人情味のある刑事役を生活感をにじませて好演した。お笑いからシリアスなドラマまで、幅広い役を見事にこなした
▼「耳の穴から指突っ込んで、奥歯ガタガタいわしたる」。時次郎の威勢のいい台せり詞ふを思い出しながら、76歳で逝った名優の冥福を祈る。
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