▼先日、NPO千葉自然学校が企画した「里山歩き」に便乗させてもらい、南房総市の伊予ケ岳を歩いてきた。房総のマッターホルンとか安房の妙義山と呼ばれる伊予ケ岳は千葉の山では珍しく岩峰をもち、山名に「岳」がつくのも、この山だけだ
▼何本ものロープを頼りに荒々しい頂きに登ると三浦半島の大楠山を振り出しに時計回りに鋸山、鹿野山、清澄山、そして房総最高峰の愛宕山、御殿山、大日山、房の大山と336メートルの山頂とは思えない大展望が広がった
▼冬だから大気が澄み渡り、伊豆大島も大きく見える。大小の船が行き交う。白い連山は南アルプス。小さなベンチがあり、ごろりと寝転ぶと、真っ青な空に浮かんでいるような錯覚にとらわれた
▼そんな気持ちの良い山頂でNPOの青年から天てん狗ぐ伝説を聞いた。それによると、伊予ケ岳は天狗の会議場で、山頂の狭い一角がその場所らしい。ある日「屋根を作ろう」と岩を削り始めたが、人間に見つかりそうになり荒々しい山頂はそのままに残されたのだという
▼平久里地区にあるかやぶきの家屋を訪ねた。持ち主が移転したためNPOが借りた古民家。日に輝く庭ではミカンがたわわ。天狗のうちわに見立てたヤツデの葉に乗せられて昼食が運ばれてきた
▼幻ともうつつともつかない不思議な伝説。神や妖怪などと共存する田舎の豊かさがここの里山に息づいていた。