「料理をする人はボケにくい」。過日、あるテレビ番組で脳の専門家がこんなお説を唱えていた。完成をイメージし、食材を吟味、下ごしらえの細かい手作業を要するから、脳によい刺激を与えるのだろう。
店頭でシロギスとフキノトウが目にとまった。「春だなぁ」とぼんやり思った刹那、「天ぷら」の名案をひらめく。こうなると、脳が味の記憶をたぐりよせ、舌が佳肴(かこう)を強く催促するのだ。
天ぷらは揚げるそばから食べるのが鉄則。舌がこげるのも委細構わず、口に放り込む。初めは熱さにやられた舌も、かむうちにキスの甘みとフキノトウのほろ苦さを認める。そこに味の対比の妙が生まれる。サクラエビとユリ根のかき揚げでは食感の妙。さらに旬の野菜天ぷらの彩りを添えれば、皿の上は春らんまんの淡景だ。
「渚の貴婦人」といった趣のシロギスは外房を中心とした近海で、フキノトウは房総の野山でとれた上質が手に入る。日ごろから舌に季節感をしっかり刻印すれば、「これも脳にいいだろう」と“春酌”した。
【材料(2人分)】
シロギス4匹、フキノトウ、乾燥サクラエビ、ユリ根、天ぷら粉100グラム、水100ミリリットル、片栗粉小さじ2、小麦粉少々、油適量。
【作り方】
(1)魚は頭を落とし、中骨を取って背開きにする。
(2)フキノトウは水洗い後に汚れた外葉をはがす。ユリ根は一枚ずつはがし、水洗いする。
(3)ボウルに水、片栗粉を入れてよく混ぜ、さらに天ぷら粉を入れ、今度はサックリと混ぜ合わせる。
(4)180度の油で、フキノトウは葉を広げて形良く揚げる。キスは揚げる直前に小麦粉をまぶす。サクラエビとユリ根はかき揚げ。