この料理を一番ありがたく感じたのはまだ20代のころ、「地球の丸く見える丘展望館」(銚子市)に初日の出の撮影に行った時だった。多分、地元のご厚意だろう。来客全員に無料で振る舞われ、人の温もりとともに熱々の汁がかじかんだ手足の先までしみた。あれから約20年、思い出の味を自宅で再現した。
つみれの味を舌上で楽しむため、あえて汁はカツオの薄味。口に入れると、団子がハラリとほぐれる。これには前歯の上下運動を必要としない。薬味のしょうがと大葉の香りが鼻に抜ける。刺し身でもいける新鮮なのだから、独特の臭みはない。また腹にたまらない汁物は酒肴に適すのだ。
煮てよし、焼いてよしのイワシは魚河岸でアジ、サバとともに御三家と呼ばれているそうだ。ただ漢字の「鰯」からも分かるように傷みやすい。その点、三方を海に囲まれた本県では常に鮮度抜群の大衆魚が手に入る。これぞ地の利の千産千消と“礼酌”した。
【材料(2~3人分)】
▽つみれ=イワシ5尾、卵1個、大葉5枚、しょうが1片、酒小さじ1、しょうゆ同、片栗粉同、塩少々
▽だし汁(500ミリリットル)=酒大さじ1、薄口しょうゆ同2、塩小さじ1/2、ねぎ・ミツバ・山椒粉各少々。
【作り方】
(1)イワシは手開きし中骨と皮をとり2センチに切る。大葉、しょうがは千切り。
(2)(1)の材料をフードプロセッサーで粗みじんにした後、卵、酒、しょうゆ、片栗粉、塩を入れ、さらにかくはんする。
(3)沸騰した湯にひと口大に摘み入れゆでる。浮き上って30秒ほどで取り出す。
(4)温めただし汁に分量の酒、薄口しょうゆ、塩、つみれを入れて、ひと煮立ちさせる。
(5)白髪ねぎ、三つ葉を盛り付け山椒粉をふる。