今回は変わり種を一貫。生シラスといえば、豪快な丼物となろうが、酒飲の後ゆえ手先の器用で軍艦巻きのすしを試した。物は静岡・御前崎漁港産で、仕入れ値は1パック280円のお買い得品だった。
物の本によると、シラスはセグロイワシの稚魚を塩湯の中で煮上げて干した食品名のことをいう。関東は伊豆地方までそう呼び、駿河湾以西ではチリメンイワシ(チリメンジャコ)となる。箱根の山を境に東西で名前が変わるからおもしろい。産卵ふ化は春と秋の2回で、いささか優れた秋物が食卓にめぐって来たというわけだ。一つの食べ物でなかなか勉強になる。
土産にもらったイクラも巻きにして並べると、皿上の紅白の景色が美しい。むろん最初にシラスの巻きを一口でほお張る。舌で感じる鮮度による甘み、歯でかんだ苦み、ほぐれたシャリの酸味、おろしたショウガが三つの味を引き締める。「第一 天然の味を失わないこと。第二 天然の配合に近づけること。(以下略)」(村井弦斎著「食生活心得帖」より)。明治・大正時代のジャーナリストが18年間の研究の末、たどり着いた結論に食味学の神髄がある。これは“巻酌”と遊んだ。
【材料(2人分)】
生シラス、イクラのしょうゆ漬け各適宜、すし飯1合、ノリ2枚、ワサビ、ショウガ、キュウリ各適宜。
【作り方】
(1)固めに炊いた白米ですし飯をつくり、冷ましておく。
(2)(1)を12個の舟形ににぎる。
(3)(2)にワサビをのせ、6等分したノリで巻く。上部は平らにしておくと、ネタがきれいにのる。
(4)(3)に生シラスをのせ、おろしショウガを飾る。イクラにはキュウリを飾る。