私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


ぱっぱんよう


 今年の暑さはどうしたことか。地球全体がどうにかなってしまったのではないか。

 農家の人は秋冬に収穫する種ものが蒔けないと嘆いている。百何十年ぶりの暑さで、熱中症で死んだ人も出ている。この暑さの中で、小倉台では側溝の改良に伴って道路工事を行なっている。働く人たちが熱中症にならなければいいが、と思ってしまう。

 暑いのは人間ばかりではない。わが家の猫コマも「暑いよう、庭の木陰で寝たいよう」と私の目をじっと見て鳴く。ガラス戸を開けようとしたり、網戸に顔を押し付けたりしている。コマは冷房の空気が嫌いで家の中を逃げ回っている。そして、わざわざクーラーの冷気が届かない煮えるような部屋で寝ているのだ。

 そのコマが、ある時はソファの上で、またある時は床の上で、そしてまた玄関の石だたみの上で、あられもない姿で寝ている。

 夫が「ぱっぱんようをしている。あの格好を見てごらん」と可愛くて仕方がない、という顔で言う。ぱっぱんようとは仰向けに寝た姿をいう。ただ行儀よく仰向けに寝るのではなく両足両手を左右に広げて、無防備そのもの、もうどうにでもしてくれ、といった寝姿だ。

 ぱっぱんようとは、どこの方言だろうか。私が疎開していた大網白里町では使わなかった気がする。夫が疎開していた茂原市本納の言葉だろうか。義父母が亡き今は教わることもできない。義兄に聞くと「妹のおむつを替えるときに祖母が言っていたような気がするが記憶は確かではない」と言う。パソコンで検索しても出ないし、方言辞典を調べに図書館に行く時間がない。

 すると夫が「叔父さんが使っていたかもしれない」と思い出したように言う。医者をしていた叔父が小さい子供を診察するときに幼児語として使ったかもしれない」と言う。「えんこ」「あんよ」などと同じ使い方だとして「ねんね」ではなく、おむつを替える時に両足を上にあげるから「ぱっぱんよう」なのかもしれない。

 郷土史と方言に詳しい市原市の佐倉東雄さんに尋ねたが、市原の八幡方面では使わない言葉だとのことであった。・・・


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