私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


一か月後は


 テレビで琴欧洲に声援を送った。琴欧洲が負けた。画面に映っている人たちの残念そうな顔、顔。うれしそうに拍手を送る人たちは白鵬を応援しているのだろう。

 そういう人たちを茶の間から見て、幸せそう…と思う。サッカーの試合を見たときも同じことを感じる。ファンとはありがたいものだ。雨の中でも一心に応援し、その瞬間は全身でボールの行方に一喜一憂する。世の中の憂さなど、全部消し飛ばすような応援だ。

 相撲が終わって席を立つ人たち。急ぐ様子もなく出口に向かうその後ろ姿が気のせいか虚しい。この「とき」から観客は日常に戻るのだ。だれもいない部屋に帰る人もいるかもしれない。介護の日常に戻る人もいるだろう。中には日常に戻れない人もいるかもしれない。偶然に乗り合わせた電車が脱線した例もある。

 皆だれでも先のことが分からないから、あんなに楽しく応援できるのだ。

 私も一か月前は朗読の仲間とデイサービスへ慰問に行った。慰問する側だから、少しは元気がある。痛い足を、さも痛くないように歩いて見せるために小学校一年生のように両手を振って歩いた。

 ところが一か月後の今は、「痛くないように歩いて見せる」などとは決して出来ない。バスの乗り降りの階段やスーパーの中で、ひと前であるにも関わらず「痛っ、イタッ!」と声を上げてしまう。大分前から医者に「このレントゲンでは、いつ手術してもいい状態」だと言われていた。一か月前はまだ痛み止めの座薬が効いていた。私は「効いているからいい」と安心していた。やがて効き目の薄れる日が来ようとは考えもしなかった。

 大勢の患者を診ている医者なら分かるのだろうか。「この患者は今に我慢出来なくなる。一か月後には手術をしてくれ、と言ってくる」と予想できるのだろうか。

 整形外科での外来患者の何と大勢いること。予約した時間に行っても一時間近くは待つ。整形外科での病名は私の知っているだけでも数多い。脊柱管狭窄症、変形性膝関節症、変形性股関節症、ギックリ腰、すべり症、骨折、椎間板ヘルニア、四十肩、頚椎症、骨粗相症、リウマチなどなど。この中には私が無知ゆえにダブっている病名もあるかもしれない。そして私の知らない病名が、ほかにもっとあるかもしれない。ということは、これらの病気で苦しんでいる人たちが大勢いるということだ。・・・


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