私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


人生の予定


 毎朝起きるとき「本日のご予定は?」と夫に問う。「何もないよ」と夫は答える。勤めには出ない年齢であっても、何かしらの予定はある。しかし夫は予定を忘れている。

 茶の間にあるカレンダーには毎日の予定がびっしりと書き込まれている。私も記憶に自信がないので、目に付くところはカレンダーだらけにしている。

 茶の間のカレンダーだけでは忘れるので冷蔵庫のドア、そしてパソコンの横のカレンダーにも色とりどりのペンで記してある。それでも不安なのでトイレの真正面の位置にも。もちろん手帳は持ち歩いている。

 夫婦それぞれの病院に行く日。二人が別々の科にかかっていても、連れ立って行くのだから予定の日だ。機能回復訓練の日。私の趣味の日。人が来る日や家の中の用事をする日も書いてある。

 それほど予定があるのに夫は朝食に起きてこない。「どうしてか?」と私は問う。「何もすることがないから」と夫は答える。何をおっしゃる、とんでもないことだ。そういう気力のないことでは人間がダメになる!することは山ほどあるのに夫がお気に召す「すること」がないらしい。

 義弟夫婦が心配して時々連れ出してくれる。千葉市の動物公園、川村美術館、花の博物館などである。弟夫婦の家まで車で四十分はかかるのに、往復して家族になったばかりの子犬を見せてくれた。ジャック・ラッセル・テリアという種類だ。まぁ、よくじゃれ付き、はしゃぎ回り、からだじゅうで喜びを表現する。顔も可愛いし、身長は四十センチほど、三キロぐらいの体重で抱くにはちょうどいい。夫にとっては広い庭園を散歩して疲れるより、ソファーで子犬と戯れていたほうが楽しかったらしい。アニマル・セラピーの時間だった。

 わが家にもセキセイインコがいるが、その子犬の百分の一もおとなしい。おとなしくても日本語を話すし、指や肩に乗って頬にキスしてくれる。私の歌に合わせて左右の膝を飛び渡る。これもアニマル・セラピーになっている。...


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