私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


やっぱり…


 わが家の猫コマが妊娠していた。「やっぱり…」と思うばかりだ。

 最近コマが日に何度も押入れの中へ潜り込んで、なかなか出て来なかった。またある時は狭い棚へ無理に入って新聞紙を細かく千切っている。さては産室の準備か、と気が気ではない。コマの乳首は日に日にピンク色が濃くなるようで、気のせいか乳房も大きくなってきた。

 ともかく妊娠していても、していなくても、避妊手術だけは受けさせたいと思った。犬猫病院へ電話をすると避妊手術は土・日を挟んで五日先に決まり予約した。

 手術当日は久し振りに晴れた日だった。四月だというのに雪が降ったり雨続きだったりで気が滅入っていたので青空を仰いで、すっきりと決心した気分だった。

 順番が来て「コマちゃん」と、にこやかな看護士さんに呼ばれる。検温、脈拍、呼吸数、耳ダニの検査、等などのあとに体重測定をすると四キロ以上もあった。重いはずだ。

 「妊娠していますか」一番気になっていることを聞いた。コマの腹部を触った医師は「していますね」とはっきり言った。「二月二十一日にひと晩、帰らなかったのです」と伝えると「じゃあ、もうすぐですよ。猫は六十日で出産ですから」と事もなげに言う。

 明日手術、明後日退院ということで、コマと分かれて帰った。避妊手術だけではなく堕胎手術にもなってしまった。かわいそうなことをしたと思う。

 他人には無関心なことであろうに、私は「コマが妊娠していたんですよ」と色々な人にしゃべった。ある男性は「どこのどいつだ、コマにそんなことをしたのは!」と怒りの声を上げた。また別の男性は「あぁあ、やられちゃったんだぁ。外に出しちゃだめですよ」嘆いた口調で言った。あまりがっかりしていたので、前の晩にコマが変な声で鳴いたことを話した。そして「二声三声だったので、あれが発情だとは気が付かなかった。翌朝雨戸を開けた瞬間に逃げ出されてしまった」と言い訳をした。私には聞こえなかったけれどコマには聞こえる周波数で雄と鳴き合っていたのかもしれない。「きっと雄が誘いに来たのだわ」そう言うと「羨ましいねぇ」としみじみと言った。変なことを言う人だ。私はちっとも羨ましくない。・・・


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