私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


いつの間に


 乳首が赤くなった。私の乳首ではない。わが家の猫コマの乳首だ。

 「赤いよぅ」先日、夫がのんびりと言った。私は飛び上がってコマの腹の毛を掻き分けた。確かに赤い。「妊娠したのかしら」赤い乳首を数える。「ひとつ、ふたつ、みっつ…、猫って幾つおっぱいがあるの?」「おれが知るかよ」八つあった。

 いつの間にそういうことになったのか、あのひと晩、家を空けたときか、どこまで出掛けたのか、相手はどこのだれか、などなど私は夫にしゃべり続けた。やっと落ち着くと妹に電話した。すると案の定「乳首が赤く膨らんでいるのは妊娠の兆候」と妹は言う。「押入れなど暗くて狭い場所に入りたがるけれど産む場所を探しているの?」「産む場所を探すのは、もっとあとのこと。出産まぢかになってから」猫の産婆を手がけたことのある妹は、すらすらと答える。

 さぁて産むべきか産まざるべきか。せっかく宿したものを堕胎するのはかわいそうだ。先日も階段の手すりを付けてくれる人がコマを見るなり「おっ、これはいい猫だ。アメリカンショートヘアーが入っている。珍しい毛並みですね」と言った。そんな言葉にもうきうきしてしまう。きっと子猫も面白い模様で生まれてくることだろう。

 コマの模様はサバということを、動物病院へ行ったときに初めて知った。三毛、ブチ、トラ、キジ、というのは知っていたがサバというのはしらなかった。「さばを読む」など数をごまかすときに使うけれど、どこに共通点があるのだろうか。魚の鯖とも共通点が分からない。

 コマは本当に妊娠しているのだろうか。夜になると家の中じゅうをものすごい勢いで走り回る。まるで草原のヒョウだ。人間ならつわりとやらで吐き気がしたり、だるかったりというところだろうに、コマは何も感じないのだろうか。...


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