私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


虫もいろいろ


 先日、気の合う人たちが集まって食事をした。

 その中の一人が漬物に手を付けなかった。「おこうこ嫌い?」と聞くと眉をひそめて激しく首を振った。「サラダは?」「サラダは好き」とのこと。「どうして?匂いがいやなの?」「何もかも」「いつから?きっかけは?」「生まれたときから」と答えるともう漬物のことには触れないで、と言わんばかりに無口になった。

 私は反対に漬物が好き。昔は塩にこだわったり、ユズやコブを入れて作ったりしたものだが、最近は「漬物の素」の液体や粉末がいろいろ売っているので、あれこれ試して楽しんでいる。

 漬物が嫌いだと言ったときの友人の顔を思い出す。あれが「虫ずが走る」という顔だと思う。虫ずの「ず」は唾液の「唾」。または胃酸の「酸」。両方とも胃液のこと。「走る」は口に上がってくること。つまり「吐き気をもよおすほどに不愉快」だったのだ。しつこく聞いて悪いことをした。

 似た言葉に「虫が好かない」というのがある。それは大抵、第一印象で決まる。散々付き合ってから「虫が好かない」とは言わない。それは「嫌いになった」のだ。

 自分の中にいる感情をコントロールする虫が「好かない」と言っているのであって、そんなときはいくら自分が努力しても相手を好きになれない。仕事上、虫が好かない人とでも協力しなければならないことがある。勝手に行動できないところが世のしがらみ。そんなときは自分の中の虫をなだめて我慢するしかない。するとストレスがたまる。

 「疳の虫」というのが子供の中にいるらしい。子供が訳もなく泣き叫ぶ、いわば心身のバランスがとれないでストレスを発散できないでいると「疳の虫」が騒ぐ。

 そうすると「虫封じ」をすることになる。「虫封じ」は七歳以下の子供にする祈祷のことで、子供の背骨の際をスプーンの裏で軽くこするそうだ。効き目があれば、その場ですぐ眠ってしまうとか。塩で手の平を一、二分洗う。指と指の間も念入りに洗い、その後、水洗いして終了。だそうだが私も妹たちも「虫封じ」をした覚えはない。・・・


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