私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


三尸の虫


 私ぐらいの年齢の人たちが集まると、健康法の話、病気の話、老人ホームの話になる。知らない人の身に起こった事態を聞くと、わが身に置き換えて身につまされる。

 「どうして人は死ぬのでしょう。千年も万年も生きたいわぁ」というセリフがあるけれど、まさかそれほど生きたいとは思わない。しかし長生きするなら健康でいたい、とは思う。それにしても世の中には、どうして病気ばかりしている人とハツラツと元気な人とがいるのだろう。不公平だと思う。

 人の寿命や病気を決めたのは宇宙を支配する神、天帝様だったそうな。昔、むかぁしの伝説にあった。天帝様は三尸(さんし)という虫の報告によって人の運命を決めたのだ。

 その虫は長さ二寸。頭と尻尾があって人間の生まれる前の姿に似ている。三尸は上尸、中尸、下尸と三匹いて、どんな薬を飲んでも駆除することはできないそうだ。

 三尸のうち上尸は人間の頭の中にいる。この虫のために目はかすみ、歯が抜けたり皺がよったりする。中尸はお腹の中にいて、短気や物忘れのもとになる。悪夢をみたり不安を感じたり悪事を行なうのもこの中尸のせいである。下尸は足にいる。この虫のせいで感情がコントロール出来なくなる。浮気などはこの虫のしわざだ。

 この虫たちは棲み付いている人間の過ちを残らず記録していて、天帝様に報告する。報告する日は決まっていて庚申の夜に限る。六十日目に巡ってくるその夜、人が眠ると三尸が体から抜け出して天に上り、天帝様に報告に行くのである。その告発を元に天帝は天の邪鬼に命じて、人に罰を与える。そうやって健康や寿命が決まるので、人は庚申の夜は眠らずにいて三尸が体から抜け出さないようにしたという。


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