御木平輔のミュージカルランド

■プロフィール
 御木平輔(みき・へいすけ) 音楽専門誌「ミュージックフォーラム」編集代表。主な著書は『ミュージカル手帳』(心交社)、「宝塚歌劇名作・傑作全演目事典平成編(講談社)、「新ミュージカル手帳」(心交社)、「ひばり模様」(七賢出版)など多数。南房総市千倉町のかやぶき屋根の家に住んでいる。


時代劇ミュージカルの傑作 若者たちの熱気あふれる泥舞台 真田風雲録(さいたまネクスト・シアター)


泥まみれの若い役者たち。撮影・宮川舞子氏

 ♪~やりてえことをやりてえなわッテンデかっこよく死にてえな~♪劇中歌『真田隊マーチ』(音楽‥朝比奈尚行)の一節だ。44人の若い役者たちの唾が飛び散り、汗が滴り落ち、泥が飛び跳ねる。演出は蜷川幸雄、74歳、元気一杯だ。55歳以上のメンバーで構成された劇団「さいたまゴールド・シアター」を2006年に創設し、今秋は若者たちの演劇集団「さいたまネクスト・シアター」を立ち上げ、47年前に書かれた福田善之の時代劇ミュージカル「真田風雲録」を演出。冒頭の歌のように「やりてえことを」を真摯に舞台化している稀有な演劇人である。この作品は、戦後日本の創作ミュージカルの最初の熱い一滴である。ちなみに1963年に映画化された『真田風雲録』(監督・加藤泰)は映像センスが群を抜き、紅一点・渡辺美佐子の魅力も素晴らしい。

 ≪1600年、関ケ原。豊臣側の真田幸村(横田栄司)が率いる真田十勇士は負け戦ながら徳川軍を相手に大活躍。この戦いで浮浪児の猿飛佐助(隼太)と霧隠才蔵ことお霧(美舟ノア)が出逢う。その後徳川軍は大仏鐘銘事件を口実に大坂城を攻撃。砦に篭城した佐助、お霧、筧十蔵や望月六郎、根津甚八たち十勇士は徳川軍を翻弄、これが大坂冬の陣。その後も徳川軍は果敢に秀頼(鈴之助)を攻め、遂に1615年夏の陣の火ぶたが切られる。結局秀頼、母の淀君(山本道子)は自刃し豊臣家は滅亡。真田十勇士も戦火に散った。佐助とお霧の運命は…。≫

 型破りの舞台(美術‥安津満美子)である。実際、「さいたま芸術劇場」大ホールの舞台上に、1・7トンの泥を敷き詰め四角い舞台(インサイド・シアター)を仮設し、それを三方から取り囲むように客席が設えている。まるで僕らは徳川と豊臣の泥試合を観戦するかのようだ。この四角いリングで若者たちはくんずほぐれつ、のたうちまわる。その時代の泥まみれの戦いを実感するかのように。一方、豊臣側の幹部連中(大野道犬役の沢竜二や織田有楽斎役の原康義たち)は畳半畳分の台車に乗って左団扇で登場し、泥には一切触れない。この上下関係の落差は、現代の格差社会にも通じ、飛び切り印象深い。...

 【メモ】11月1日(日)まで彩の国さいたま芸術劇場で絶賛上演中。問い合わせは同劇場、電話0570(064)939。


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