御木平輔のミュージカルランド

■プロフィール
 御木平輔(みき・へいすけ) 音楽専門誌「ミュージックフォーラム」編集代表。主な著書は『ミュージカル手帳』(心交社)、「宝塚歌劇名作・傑作全演目事典平成編(講談社)、「新ミュージカル手帳」(心交社)、「ひばり模様」(七賢出版)など多数。南房総市千倉町のかやぶき屋根の家に住んでいる。


虐殺された小林多喜二の音楽評伝劇 「組曲虐殺(こまつ座&ホリプロ)」


左から井上芳雄(小林多喜二)、高畑淳子(姉・佐藤チマ)、石原さとみ(恋人・田口瀧子)。撮影・落合高仁氏

 わずか29歳の若さで官憲に虐殺されたプロレタリア作家、小林多喜二(1903~33年)。彼の代表作が、ちょうど80年前に発表された「蟹工船」だ。同船で働く虐げられた若者たちが過酷な労働に抗して立ち上がるまでを描いたもの。不況に苦しみ、行く先が不透明な今の日本に似ていることから現代の若者にも読み継がれている名作だ。その多喜二の生涯を音楽評伝劇として描いたのが井上ひさしだ。両作家に共通するのは、難しいテーマを誰にでも解りやすく表現していることである。それにしても恐ろしいタイトル。多喜二の虐殺は氷山の一角か。プログラムで知ったのだが、当時の警察署内で何が起こっていたか。虐殺された者80人、拷問獄死が114人、病死獄死1503人という記録がある。その後、日本は大虐殺の道、戦争へとひた走った---。さて、作曲兼ピアノ生演奏は世界的ジャズピアニストの小曽根真。演出は栗山民也。ちなみに栗山の義理の祖父にあたるのが多喜二のデスマスクを取った名演出家の千田是也だ。

 ≪♪小林三ツ星堂パン店小樽で一番のパン屋さん~『代用パン』で幕開け。時は、昭和5(1930)年晩春、大阪。特高刑事(山崎一)が小林多喜二(井上芳雄)を声高に詰め寄っている。そこに鬼刑事(山本龍二)が優しい口調で、家族や恋人のことを話し出す。口を割らなかった多喜二がついに爆発。『伏せ字ソング』を歌いだす。一カ月後の東京。多喜二の住まいには同志のふじ子(神野三鈴)が…。そこに小樽から姉(高畑淳子)と恋人瀧子(石原さとみ)がやって来て、鉢合わせ。翌昭和6年。再び捕らえられた多喜二は、心の鏡に向かって独唱するのだった。そして運命の昭和8(1933)年2月20日。警視庁築地警察署。逮捕されて3時間後、拷問による虐殺。警察が公表した死因は「心臓麻痺」だった…≫。

 【メモ】10月25日(日)まで天王洲・銀河劇場で絶賛上演中。問い合わせはホリプロチケットセンター、電話03(3490)4949。


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