御木平輔のミュージカルランド

■プロフィール
 御木平輔(みき・へいすけ) 音楽専門誌「ミュージックフォーラム」編集代表。主な著書は『ミュージカル手帳』(心交社)、「宝塚歌劇名作・傑作全演目事典平成編(講談社)、「新ミュージカル手帳」(心交社)、「ひばり模様」(七賢出版)など多数。南房総市千倉町のかやぶき屋根の家に住んでいる。


幸せを運ぶ座敷わらし ユタと不思議な仲間たち 岩手県の小村が舞台


「ユタと不思議な仲間たち」の一場面。撮影は荒井健氏

 ♪…ワダワダ、アゲロジャ、ガガイ…♪。不思議な仲間たちがくり返す言葉が耳に残る。生きたくても生きることができなかった彼らの言霊だ。昔、天災によって食料が極端に不足した時、口べらしのために黄泉の国へ送られたのが彼ら、座敷わらしだ。名前もつけられずに葬られ、この世に戻りたくても、戻れない。ただ、<…オレだオレ、開けてくれ、おっかあ…>と叫ぶだけ。3・11以後、先の南部弁の呪文が切ない。舞台のモデルは岩手県の小さな美しい村である。

 ≪東京育ちのひ弱なユタ(上川一哉)は、東北の「湯の花」村へと引っ越してきた。だが、村の子どもたち(鈴木伶央ら)にとっては、かっこうのイジメの対象だ。折れそうな心を支えるのが小夜子(奥平光紀)と寅吉(吉谷昭雄)だけである。そんなある日、幸せを運ぶ座敷わらしたち(菊池正ら)と出逢う。ユタは、彼らに励まされ鍛えられ、いつしか、たくましく成長してゆくのだった≫

 三浦哲郎の原作の語り口は標準語だが、ミュージカルではユタ以外はみんな南部弁である。今回の役者陣は東北出身者が多く、独特のイントネーションなどが心地よい。特にユタと座敷わらしとの橋渡しをする寅吉は初演以来、吉谷が演じてきて、方言指導も担当。青森県出身の吉谷の台詞は抑揚に富み、美しく柔らかい。まるで音楽のようだ。音楽といえば、『津軽海峡冬景色』などを作曲した三木たかしの義太夫や民謡、浪曲などを取り込み現代風にアレンジした名曲がズラリと並ぶ。それらは日本人が失いつつある魂を揺り動かす。冒頭のサビフレーズが登場する座敷わらしの自己紹介のメッセージソング♪『おれたちゃペドロ一家』は、コミカルに味付けされているだけによけい切ない。一幕幕切れの♪みんなは一人のために一人はみんなのために…と座敷わらしが歌う『友だちはいいもんだ』は、教科書に載りNHKでも紹介された誰でも口ずさめる逸品である。

 【メモ】6月25日(土)まで浜松町・四季劇場【秋】で絶賛上演中。なお7~8月は東日本大震災で被災した岩手・宮城・福島の3県で無料の出張公演が予定されている。問い合わせは劇団四季予約センター(電話0120-489444)まで。


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