宝塚の小池修一郎の活躍が目覚しい。潤色に関しては群を抜いている。宝塚は、女性が男性を演じる世界でも稀有な劇団である。この特殊性を生かしたアレンジが小池マジックだ。1997年初演のブロードウェー・ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」は一昨年の2008年、小池の潤色・演出を得て星組で初演され人気を博した。オリジナル版より宝塚版のほうが評価は高い。先に述べたように、女性が男性を演じるわけだから、愛のカップルは明確な形でないと、絵空事に終わる危険性を持っている。この「スカーレット~」はフランス革命を背景に、ひとりの女性をめぐり、男性二人が相対する愛憎劇の一面がある。この三人、宝塚は当然女性が演じる。しっかり色分けされていないと観る側はおいてけぼりを食わされる。三人の行動の正当性もより明確に描かれていなければ、特殊性に引っ張られて、説得力が失せる。だから、宝塚版は大胆な脚色がミソなのだ。それによって、オリジナルとは一味も二味も違う旨みと深みが出てくる。小池は宝塚の宝「ベルサイユのばら」との接点を求め、原作の2年後の1794年に注目した。つまりルイ16世とマリー・アントワネット(通称「ベルサイユのばら」)の遺児、ルイ・シャルル救出の挿話を大胆に盛り込んだ。これで宝塚の「ベルばら」と通底し、物語が大きく膨らんで、成功の一因となった。ちなみに再演の今演は、男役スター霧矢大夢の待望のトップ披露公演である。
≪革命の嵐が吹き荒れるパリ。ジャコバン党の指導者ロベスピエールの一味は無実の貴族たちを次々と断頭台に送る。が、処刑前夜に突如現れてはまんまと彼らを救い出す秘密結社があった、その名は「スカーレット・ピンパーネル(紅はこべ)」。王太子ルイ・シャルルの救出が最大の目的だ。その正体を突き止めようと過激派のショーヴラン(龍真咲/明日海りお)は必死。一方、時々パリにふらりと現れるのがお気楽な英国貴族パーシー(霧矢大夢)。彼はフランスの女優マルグリット(蒼乃夕妃)に一目ぼれし、結婚。ショーヴランはかつての恋人である彼女に近づき秘密結社に迫るのだった。その結社を操る男は一体誰なのか。≫
米国のヒットメーカー、フランク・ワイルドホーンの名曲が成功に拍車をかけている。特に宝塚版に書き上げられた♪『ひとかけらの勇気』はスケールが大きく、口ずさみやすい。また♪…狂いそうなほど胸は打ち砕かれた~と歌う『祈り』、霧矢の歌い上げが耳に心地よい。その霧矢扮するパーシーが秘密結社の黒幕であることは最初から観客にはばれている。それでも、ぐいぐいと物語の中に引き込むにはシリアスさと同時にコミカルセンスが必要。霧矢が扮装をしてショーヴランの鼻を明かすシーンは笑いが満載だ。今演、蒼乃扮するマルグリットとのすれ違い夫婦の心模様も色濃く浮き彫りにされた感じだ。最後に、一幕幕切れと二幕幕開きの仮面舞踏会のシーンは圧巻。
【メモ】7月4日(日)まで東京宝塚劇場で絶賛上演中。問い合せは同劇場(電話03-5251-2001)。