…人の生き血でなければ生きていけない、身の丈が数メートルの人食い花が舞台に登場…。1982年、米国で産声をあげたこの奇想天外な作品は、日本では84年に初演され、その後度々上演されているホラー・ミュージカルの傑作だ。今演は人気ミュージシャンのDAIGO(祖父は竹下登元首相)が初舞台ながら、いい味を出している。ちなみに原作は、たった2日で製作されたと言われる伝説の映画(60年)だ。86年にはミュージカル映画にもなった。初めに映画があって、その後に舞台化され、さらにミュージカル映画となった先駆的な作品といえる。この系譜は「ヘアスプレー」「プロデューサーズ」と続く。また、まがまがしいテーマながら、根強い人気を誇っているのは作曲家アラン・メンケンのメロディーによるところが大きい。彼はその後、「美女と野獣」「アラジン」「リトル・マーメイド」などディズニー・ミュージカルのヒット作を次々と手掛けている。
≪NYは下町。しがない花屋で働く孤児院育ちの気弱なシーモア(DAIGO)はごうつくばりの店主(尾藤イサオ)に叱られてばかり。彼がひそかに思いを寄せているのが店員のオードリー(安倍なつみ)。しかし彼女はサディストの歯科医(新納慎也)の恋人で、いつもアザだらけだ…。皆既日食の日に、シーモアは不思議な花を中国人から入手。恋するオードリーにちなんでオードリーII(声‥深沢敦)と名づけ、店に飾ったところ千客万来。…が、この花の好物は血。シーモアの指の血を吸って、みるみる成長。巨大化したオードリーIIはさらに血を要求。窮した小心者のシーモアの心に悪魔のささやきが…。オードリーに暴力を振るう歯科医をエサにしたら…と。やがて親しい人々が次々と消えてゆくのだ。≫
正直、いままで観た中でベストのカンパニーかもしれない。DAIGO、気の弱い人間が突然殺人者に変貌する、その様をごく自然に描写し、なおかつ切なさを醸し出すセンスに驚いた。歌唱に説得力がありユーモアセンスにも長けている。商売繁盛で客からの電話が鳴り止まぬなかで右往左往しながら安倍と歌う「コール・バック・イン・ザ・モーニング」は出色。悲劇のヒロインを健気に演じる安倍も好演。黒ずくめのバイクスーツで登場する歯科医の新納、強烈。これほどこの役に似合う役者にはお目にかかったことはない。そのほか役柄が180度も違う4役もこなし貢献度は大。一幕幕切れ、新納が笑気ガスで笑死するシーンは爆笑、やがて悲しき。オードリーIIの深沢、声に振幅があって迫力十分、女装でも登場し場を沸かす。...
【メモ】30日(日)まで下北沢・本多劇場で絶賛上演中。6月4日(金)印西市文化ホール(電話0476-42-8811)、6月5日(土)君津市民文化ホール(電話0439-55-3300)でも上演。