御木平輔のミュージカルランド

■プロフィール
 御木平輔(みき・へいすけ) 音楽専門誌「ミュージックフォーラム」編集代表。主な著書は『ミュージカル手帳』(心交社)、「宝塚歌劇名作・傑作全演目事典平成編(講談社)、「新ミュージカル手帳」(心交社)、「ひばり模様」(七賢出版)など多数。南房総市千倉町のかやぶき屋根の家に住んでいる。


小栗旬主演のパンク・オペラ 時計じかけのオレンジ(ホリプロ) ラストは映画と違う舞台版


中央が小栗旬。撮影・田中亜紀氏

 年明け早々、刺激的な舞台に出逢った。「時計じかけのオレンジ」は、スタンリー・キューブリックが1971年に監督した映画だ。当時、飛び切りの映像に驚愕、なによりも過激なバイオレンスに怖気づきながらも心ひそかに魅かれた。原作は62年に英国の作家アンソニー・バージェスが、笑いながら悪逆非道に振る舞う15歳の少年を主人公に、近未来の社会を英語とロシア語の奇妙なチャンポン語で描き話題を呼んだ。ただしあまりにも映画が有名になり、原作者が羨んだとも…。本邦初演の舞台は、そのような理由で作家自身によって後年意気込んで書かれた戯曲をベースに、先鋭的な演出で人気の河原雅彦(上演台本・演出)がパンク・オペラに仕立てあげたものだ。音楽監督は内橋和久、振付は井手茂太。そして主演は小栗旬。

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 国家が個人を管理する近未来のロンドン。アレックス(小栗旬)は平凡な日々にうんざり。唯一の気晴らしは仲間との理由のない悪事だ。ある日、老作家(武田真治)の家に押し入り暴行を加え、妻を陵辱。彼の暴虐はエスカレートし、挙句の果ては仲間に裏切られて刑務所入り。刑務所では早く自由の身になるために、牧師(石川禅)に取り入り、ドクター(橋本さとし、キムラ緑子)が開発した人格矯正法の実験台になる。治療が始まり、残虐極まりないシーンが永遠と続く。しかもアレックスが大好きなベートーベンの「第九」が流れるなかで。彼は激しい嘔吐に襲われる。実験は成功。洗脳され羊のようになって釈放。昔の仲間は今や警察官。彼らにリンチされ、半死半生の体でたどり着いた先は皮肉にも老作家の家だった…。ここから老作家の復讐劇。彼を監禁し大音量で「第九」を流す。耐え切れない嘔吐に襲われ飛び降り自殺を図る。実は老作家は彼を自殺に追い込みメディアを利用して政府打倒を目論んだ。だが自殺は失敗。この自殺未遂で窮地に立った政府=内務大臣(吉田鋼太郎)は、アレックスを以前の人格に戻す治療を施した。アレックスに邪悪な表情が再び戻る。

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 と、ここまではほぼ映画と同じだが、この後に舞台版のラストが加わる。ある日、かつての仲間と再会、結婚し子どもが生まれたと聞き、アレックスも家庭を夢見る。かつての悪事は若気の至りだった、と。つまりハッピーエンドなのだ。どちらのラストがいいかは舞台版を観て判断してほしい。

 【メモ】30日(日)まで赤坂ACTシアターで絶賛上演中。問い合わせはホリプロチケットセンター(電話03-3490-4949)。


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