…70年代初め、NYの超豪邸(部屋数28)で異臭騒ぎが発生し物議を醸した。その邸はゴミや汚物に溢れ、50匹以上の猫やアライグマも住み着く荒廃ぶりだ。一体誰が住んでいるのか?実はジョン・F・ケネディ大統領夫人ジャクリーンの叔母と従姉妹であることが発覚しスキャンダルに…。母娘は同じ名前だったのでビッグ・イディとリトル・イディと呼ばれた。彼女たちをドキュメントタッチで撮影した映画(1975年)がカルト的人気を呼び、2006年に舞台化。それがノンフィクション・ミュージカルと言われる『グレイ・ガーデンズ』(脚本=ダグ・ライト、音楽=スコット・フランケル、作詞=マイケル・コリー)を生んだ。2007年のトニー賞では3部門受賞。日本初演の演出はブロードウェーで『太平洋序曲』を手がけた鬼才・宮本亜門だ。
≪1941年米国、人も羨む邸グレイ・ガーデンズ。ビッグ・イディ(大竹しのぶ)は娘のリトル・イディ(彩乃かなみ)の婚約パーティーで、婚約者のケネディ家の長男(川久保拓司)に娘の過去を告げ口。-ちなみに次男がJFKだ-。婚約は解消され、怒り狂った娘は家出。時は流れ1973年、年老いたビッグ・イディ(草笛光子)と、邸に舞い戻ったリトル・イディ(大竹しのぶ)の母娘はゴミ屋敷と化した邸で、追憶にふけるのだった…≫。プロローグはスキャンダラスな新聞記事がグレイ・ガーデンズ(灰色のコンクリート塀に囲まれた庭が由来)の外壁に映し出され、邸に出入りする猫たちの不思議にリアルな映像も映し出される。この手法は今夏上演された宮本亜門演出の『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』でも使われたが、とても効果的だ。さて、一幕はイディ家の絶頂期だ。ビッグ・イディ(47)の大竹とリトル・イディ(24)の彩乃の母娘の葛藤も凄まじいが、二幕ではもっとヒートアップする。大竹は56歳になった娘リトル・イディを演じ、自堕落な78歳のビッグ・イディは草笛が演じた。つまり大竹は一、二幕で没落前の母と没落後の娘の両方を演じた。これは面白い。口汚く怒鳴り合うけれど、結局は、相互依存の強い一卵性母娘であることが解る仕掛けだ。でも日本的な湿気を感じる関係ではなく、ドライな感じが底流に流れるのがこの作品の特徴か。パラサイト・シングルとかキャリア・ウーマンの日本の現代にも通じる問題だ。とにかく大竹、草笛の丁々発止の迫力ある掛け合いはお見事の一語だ。...
【メモ】12月6日(日)まで日比谷・シアタークリエで絶賛上演中。電話予約は03-3201-7777東宝テレザーブ。