週一回、近くの集会所で太極拳を習っている。熱心な先生と気の合う仲間に恵まれて、この秋で三年目を迎える。始めた当初は、なまった体を動かすのが精一杯だった。だが、今年の冬は毎年のようにかかるぎっくり腰にならなかった。少しずつ効果が出ているらしい。教室では、太極拳の演舞の前と後に立禅(立ったまま行う禅)があり、臥禅(寝てする禅)も行う。心をからっぽにして体を弛め、心身をニュートラルにする瞑想の時間だ。体が硬いのは以前からわかっていたが、心身を弛めるのも不得手なのだと気づかされた。頭の中では雑念が渦巻き、体はまるで棒のよう……。どれほど無用な力を入れて今まで生きて来たことか。いや、今もまだ硬い体と固い頭で、力を抜けずにもがいている。
太極拳は武術なので力強さも必要なのだが、しなやかさも求められる。強さと柔らかさ。静と動。正反対のふたつのものを自由自在に操れるようになった時、新境地が開けてくるはずなのだが、まだまだ遠い道のりだ。
私が絵本を描いているのを知った太極拳の先生から、先日、絵本作家・長新太さんの新聞記事を戴いた。
そこには<干からびた常識のタガが心地よく、ポポーンと外れること請け合いだ。頭と心をほぐすのに、遅すぎる事はない>と書かれていた。その言葉は長新太さんの作品評だったが、私自身のガチガチに固まった心身をほぐすヒントでもあるような気がした。
長新太さんは、ナンセンス絵本をたくさん描いている。固い頭で読み始めると「いったい何が言いたいの?」と戸惑いを覚えるかもしれない。だが、「常識のタガ」で固まっていない子どもにとっては、嬉しい驚きがいっぱいの絵本だ。自由奔放な絵と軽やかな言葉は、子どもが絵を描きながら勝手にお話を作り上げていくのとどこか似ている。行きつく先の読めないストーリー。心地よい繰り返しと思いがけない展開。そこには理屈がなく、新鮮な感覚だけがたゆたっている。幼い子は、「してはいけません」と言っている端から、してはいけない事をやってのけることがあるが、そんな開放的な感覚が絵本の随所に散りばめられている。
長新太さんの絵本は、お話会で随分使わせて頂いた。どんな絵本と組み合わせても相性がいいし、子どもの感性が全開になるので、読み手にも反応が直に伝わる嬉しい絵本だった。・・・
【メモ】「タコのバス」長新太・福音館書店
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