本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「なかま」 『のはらうた』


イラスト 藤原あずみ

  昨年の秋、生まれて初めてドングリを食べた。トンガリ頭の細い実で、正確には椎の実のことだ。紙に包んで草の茎で縛って、トトロのお土産のように友人が持って来た。「生でもいいし、炒るともっと美味しくなるのよ」と彼女が言う。ドングリはアク抜きをしないと食べられないと思い込んでいた。恐る恐る生でかじってみた。素朴な味。微かな甘みがあった。松の実の味にも似ている。炒ると確かに甘みが増して美味しかった。なるほど、リスやネズミが夢中で食べるわけだ。小さなドングリを歯で割って口に運びながら、齧歯目の気分を味わった。

 昨年の秋も、熊や猪が里に下りて来るニュースが相次いだ。射殺された母子熊の報道には胸が痛んだ。里の人の恐怖も分かる。だが、熊の方も人里に下りるのはさぞや恐かっただろう。人と獣の領域がきっちりと分かれていた時代、秋の森は獣たちの楽園だった。バラバラとドングリは降るし、山葡萄や茸が実るし。冬ごもりに備えて、たらふく腹ごしらえができただろう。較べて今は……。人と獣の領域はあいまいで、針葉樹が多くなった山には実りが少ない。熊が里に下りて来るのも、已むに已まれぬ思いでという気がする。そんな折、「熊の子別れ」について書かれた西舘好子さんの文を読んだ。子別れの日が近づくと、母熊は美味しい薔薇イチゴの繁みに子熊を連れて行き、子熊が夢中で食べている隙にそっと姿を消す。そのまま母子は二度と会うことはない。野生動物の世界では、自分で身を守る事が生きる事。「群をなさない強い熊にとっては、強烈な激しい一瞬の別れ方が一生を決定してしまう」らしい。その激しい子別れの儀式にも、やはり母心が働くのがいじらしい。人も獣も同じ。いや、生きとし生けるものすべてが、同じ心を持つのだと、信じたい。

 我が家には、人と猫が2対6の比率で暮している。多勢の猫に、暮らしが優先される事もしばしばだ。だが、動物優先の暮らしは結局人にも心地よい。我が家では、化学成分の入った洗剤や芳香剤は使わない。庭先の菜園でも、殺虫剤は撒かない。そのせいか、春から秋にかけて、家の中をゴキブリやバッタ、アリやコガネムシが横行した。猫たちはハンターと化し、私は小さな侵入者たちと友好的な関係を結んだ。残念ながら、ゴキブリとは無理だったが。・・・

 

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