銀幕への誘い

人間失格からの脱出 「東京プレイボーイクラブ」 気に入った場所はどこダ


映画「東京プレイボーイクラブ」の左から大森南朋、臼田あさ美、光石研。(c)2011 東京プレイボーイクラブ 配給:スタイルジャム

 大森南朋はとらえどころのない役者だ。お人好しの三枚目が容姿的に最適と思うのだが、日本アカデミー主演男優賞を受賞した「ハゲタカ」(09年)では企業買収の仕掛け人を冷徹に演じてみせる。要はカメレオン的な七変化の術をお持ちということだ。今回はキャリア初のチンピラ役。もう一人、芸達者を配役した。「あぜ道のダンディ」(11年)の記憶も新しい名脇役・光石研である。一度キレたら手が付けられない大森が傷害事件を起こして、昔のダチの光石が経営する場末のピンサロに転がり込む。そこは人間失格連がたまるはきだめ。IQ低レベルの不良彼氏のせいで、いや応なくはきだめのツル子さんとなった臼田あさ美も巻き込んで、ヤクザ3兄弟との抗争が半間の笑いとともに勃発。人間失格からの脱出…オレたちの気に入った場所はどこダ!

 奥田庸介監督は24歳で、この劇場デビュー作を完成させたという。若輩ゆえ有名&ベテランの俳優、スタッフに気後れがあったのだろう。脚本の構成、尺配分、画面構図が遠慮がちでつたない。<我を通せなくてどうする?>と序盤、心配したが、終盤の男優陣の絶叫リンチ劇のたたみ込みで名誉挽回。まだまだ力任せで荒削りだが、今後の成長が楽しみな有望新人君である。

 エンディング曲「パワー・イン・ザ・ワールド」(エレファントカシマシ)を筆頭に挿入歌「ONE NITE BLUES」(仲井戸麗市)、「ヤマトナデシコ七変化」(小泉今日子)、「てんとう虫のサンバ」(チェリッシュ)などの選曲がすばらしい。作品全体を覆う昭和レトロな空気に絶妙に合う。男の哀愁を漂わせる一方で、半間の笑いを起こすスコアだ。

 大森はクシを入れぬ髪と無精ヒゲで汚れを塗膜。クールな目が暴力ざたの歴戦を想像させるチンピラである。無表情で相手を半(全?)殺しする乱打。こういった良心の一片もない男がホントーに怖い。光石は「ヒミズ」(1月公開)の酒乱オヤジなど近ごろ、荒くれ役のオファーが多い。ただし、大森と違って内面の気弱さをうまく透かして見せる。臼田は売りのおっとりとした癒やし系が、まさにはきだめにツル子さんのかわいさ。常に受け身ゆえ、大森がボコボコにしたヤクザ次男&三男への慰謝料代わりとして、SM長兄の変態プレーのいけにえに。ラブホのエロ電飾ベッド上で思い切って能動すれば…最悪の結果となる。

 金と女と暴力と人間失格の行為が、流浪の果てにたどり着いた場末の闇をとっぷりと深める。意のままにならぬ現実に、大森は声帯も千切れよと吠える。ラストの血の叫びは即興演技だそう。エンディング曲がくい気味に被さる。力が、もっと力が…やり場のない怒りがさく裂する。

11年日本
監督・脚本 奥田庸介
撮  影 今井孝博
編  集 小野寺拓也
音  楽 石塚徹
上映時間 96分
出  演 大森南朋、光石研、臼田あさ美、淵上泰史ほか
公  開 4日から都内の渋谷・ユーロスペース、シネマート銀座ほか全国ロードショー。県内は3月24日から千葉劇場


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