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北方の海の幸として多くの人の舌をうならせるタラバガニやハナサキガニの仲間が房総半島の海にも生息していることは、一般にはあまり知られていない。今回紹介するイバラガニモドキは、タラバガニに容姿のよく似た近縁種のうち、房総の海に比較的数の多い種類である。
イバラガニモドキは、甲の幅が20センチを越える大型の甲殻類である。多くのタラバガニ類と同じくベーリング海やオホーツク海に多産するが、生息水深が400メートルを越える深海生物であるため、日本列島太平洋側の深海域づたいに分布域を九州の日向灘まで伸ばしている。これらの水域で深海カニ篭漁や深海底曳網漁が行われている場所では、イバラガニモドキが捕獲されることは多い。しかし、このカニの分布域の範疇ながら、外房ではこういった漁法が行われていないため、滅多にイバラガニモドキにはお目にかかれない。
ところが、今年の2月、海の博物館に近い「新勝浦漁業協同組合鵜原支所」の漁師さんから、偶然キンメダイ漁の釣り糸に引っ掛かった勝浦沖水深500メートル産のイバラガニモドキを譲っていただいた。分布していることはわかっているものの、なかなか標本を手に入れることのできない甲殻類である。とても美味しそうだったが、学術標本にすることを優先させていただいた。
なお、タラバガニの仲間はカニのような格好をしているが、ヤドカリの仲間である。一番後ろの脚(第5胸脚)が短小で甲の中に折り畳まれていることや、メスの腹節が右側にねじれていること(写真矢印)などの体のつくりが真正カニ類と大きく異なる部分である。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 奥野淳兒)
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