海の紳士録

千葉県立中央博物館分館 海の博物館

〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
電話 0470-76-1133 FAX 0470-76-1821
午前9時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日 毎週月曜日(ただし月曜日が休日に当たるときは翌日です)


分布の謎 サラサエビ


鋸南町地先の浅海で撮影したサラサエビ

 本連載の第38回でヤイトサラサエビを取り上げ、その中でサラサエビという類似種と分類学的に混乱していたことに触れた。今回は、サラサエビのほうを紹介したい。

 もともと、日本で最初に発見されたサラサエビ科エビ類はサラサエビで、わが国におけるこの科の代表種である。典型的な温帯種で、太平洋側では千葉県以南、日本海側では秋田県以南の浅海に多産する。岩の亀裂などに群れを作って暮らしており、すべての個体が規則正しくほぼ同じ方向を向いているところをよく見かける。スキューバダイビングを使って潜ると、房総半島各地のダイビングポイントでは浅い水深帯で簡単に観察することができる。海の博物館のある勝浦では、大潮で潮がよく引く時には潮だまりでも見られることがある。日本以外では韓国沿岸に分布していることが知られている。

 最近、台湾産のサラサエビ類標本を調べることができ、台湾北部にも分布していることが確認できた。しかし、サラサエビは琉球列島からは見つかっていない。沖縄県や鹿児島県南部のすべての島で観察したわけではないが、奄美大島や沖縄島、久米島などで見つかるサラサエビ属のエビはヤイトサラサエビかスザクサラサエビだけである。

 日本の暖温帯域に多く見られるのに、琉球列島ではぱったりと見られなくなる種類は少なくない。さらに、沖縄を飛び越えて台湾に分布している例は、サラサエビの他にも魚類や甲殻類で知られている。これら温帯性海洋生物の中国沿岸での分布状況が調べられていないのではっきりしたことはわからないが、黒潮の流路を避け、大陸をつたって台湾まで分布域を広げているのではないかと想像している。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 奥野淳兒)


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