

「『友達』という名のケーキはイタリアのマスカルポーネとフランスのチョコレートが主材料。原産国は違うけど、溶ける温度帯が同じ点がポイント」
一つひとつの作品に込めた“メッセージ”を説明するル・ノワ(銚子市)の渡辺晴之社長(34)は、ほかのどの質問に答えるよりも饒舌(じょうぜつ)だ。手作りにこだわり、「ロボットが作ったケーキにメッセージはない」と言い切る。
本場フランスへの留学やスペインの有名レストランでの勤務を通して洋菓子職人としての腕を磨き、現在では銚子市と茨城県神栖市内に計三店舗を展開する。
店の前身となる和菓子店は昭和二十年代に祖父の故文吉さんが創業し、洋菓子職人である父の正敏会長(65)が跡を継いだ。晴之社長が本格的に家業を継ぐと決めたのは二〇〇一年。店があるJR銚子駅前に相次いで大手洋菓子チェーンが出店、客足が五分の一に落ち込み「このままではつぶれる」と一念発起した。一日二時間の睡眠で約六年間、新商品開発や経営改革に明け暮れた。
すべての素材にこだわったという「究極のモンブラン」は従来製品の倍の値段にもかかわらずロングセラーとなるなど、努力の成果は年10%ずつの売り上げ増となって表れ、二〇〇七年度は一億円の大台に乗り上げた。短時間睡眠を続けるうちに、日常の何気ない一こまからアイデアがわき出るようにもなった。「眠っていた才能が目覚めたのか、神様が頑張りを認めてくれたのか」と予期せぬ変化に目を細める。
経営も菓子作りに負けないくらい独創的。人気歌手グループのプロデュース手法から着想を得た「モーニング娘。戦法」は、頻繁な商品の入れ替えにより、飽きられない店にする戦略。そのためのレシピは百八十種類を超える。現在進行中は「ウサギとカメ作戦」。売り上げが低い二号店を一月中に全面改装して、ほかの店に追い付かせる目標だ。「カメでもローラーを履かせれば遅れを取り戻せる」と自信をみせる。
従業員への口癖は「アスリート(競技者)でアーティシャン(芸術家)であれ」。自分を追い込むことで良い作品が生まれると信じている。改装は自身へのプレッシャーでもある。「ローラーを履いてひっくり返るわけにいかない」。今後の新規出店計画などに大きく影響する二号店のリニューアルオープンに向け期待が膨らむ。
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