わたしの徒然草

■プロフィール
酒井 登志生(さかい・としお)
  エッセイスト、作詞・作曲家、歌手。房総文化懇話会会員。著書に『ぶっつぁるべえもじな』『わたしの徒然草・田舎の文化人』『わたしの徒然草・オレ、たそがれ』など多数。千葉市在住。


「絆」は心の結び


 人心・世相・希望を表徴する漢字一文字が選択される中に、大震災に立ち向かう心と心の「絆」の文字があり、心強かった。

 古来「絆」は、糸偏(いとへん)により「ひも」を表し、牛・馬・犬など家畜の引き綱、つなぎ綱を意味したという。

 初めは家畜を束縛して、人間の思うがままに調教したが、やがて愛情が生まれ、友情を形成する状況もあった。あくまでも、それは「ひも」による主従の関係であり、一定の距離感をもった成り立ちだった。

 東日本大震災で希求される「絆」は、ひもによる距離感をもった結び付きではない。心と心が結び合う人類愛的なきずなである。

 ただ原点が「ひも付き」ということから、ともすると、被災地に不快感を与えるボランティアのケースもあったようだ。

 被災地の選択した「絆」は「ひも」ではない。人類愛に立脚した心と心の結び付きのはずだ。

 じつは私はあべこべに、被災地側の友人から「絆」を贈られた。

 親類筋でもあるその畏友(いゆう)は、岩手県下閉伊郡山田町で、酒・米穀類を主とする大商店を営んでいたが、商品ともども住居までさらわれ、いまは仮設住宅に身を寄せる境遇。

 無力な私には、つたない手紙類で同情するぐらいしか術(すべ)がない。

 ただ空疎(くうそ)な声援はしない。努力だ!がんばれ!という言葉で発破をかけるのは、ショックの大きかった被災者をさらに追い込む心配があり、逆効果となる。

 日を置かず、友人の弟さんからもお歳暮が届く。弟さんも兄上と同じく仮設ホーム暮らしだそうだ。

 お二人からの例年どおりの贈り物は、新巻鮭、イクラ、ウニ、タラコ、ホタテガイ、昆布…。狭い台所が満杯になり、にわかお大尽として平成24年正月が迎えられる。......


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