読者文芸

2010年8月22日


日報俳壇 山中葛子選

匝瑳市 江波戸三好
戦争の語り部の減り夏来る
 【評】戦争の悲惨さを伝える「語り部」がにわかに少なくなった戦後六十五年を迎えている。現代俳句歳時記には「原爆忌」「終戦日」が夏の季語になっているなど。平和へのメッセージを込めた俳句大会が毎年催され、沢山の俳句作品が寄せられている。まさに、「語り部」のごとき俳人のすばらしさと言えようか。戦争への思いがよみがえる夏の到来である。
習志野市 花井保
月下美人花待つ秒針音ひびく
 【評】その名も美しい「月下美人」。独特の香りを発散させながら、大輪の白い花を咲かせる一夜かぎりの花との出会いともなれば、待ちわびる心のたかまりはひとしおのもの。花は暗くなるころから開き始め、八時ごろに満開になり、深夜にはしおれ始める。今か今かと身も心も「秒針音」のひびきになりきっている緊張感の妙味。

日報柳壇 平井吾風選

大多喜町 鈴木政雄
モンゴルの綱が頼りの大相撲
 【評】相撲界の不祥事もまだ当分はぬぐい去れない。国技という権威がそれだけに強かったという反動か。伝統が守れるならば、モンゴルでもヨーロッパでも肌の色には関係ないという精神なら上々。いずれにしても原句のように今は独り横綱のカンバン力士に頼らざるを得ない。と言わんばかりのウガチが利いて面白い。
八街市 伊藤三峨
この山を越えれば其れの繰り返し
 【評】一難去ってまた一難。せっかく解決しても多くの人生とは、こんなところかもしれない。作者の気持ちがよく分かる。川柳とは決して難しくとらえるものばかりではなく、糸口は普通の暮らしの中にあり、チクリと痛さを感じる作風でありたい。

日報歌壇 大島史洋選

千葉市 青木勘一
七夕の我が思い出は悲しき日二次大戦の口火となりし日
 【評】作者は九十三歳。昭和十二年、日中戦争の起こった日ですね。知っている人も少なくなりました。
習志野市 赤間列子
崖沿いに繁る雑草つまみきて外に出られぬ猫へのお土産
 【評】家の中で飼っている猫には、時々、草をあげる必要があるようです。

日報詩壇 中谷順子選

今、詩が書きたい
  香取市 藤岡弘文
詩が書きたい
うら若き乙女が
感傷か憧憬か手にした
詩集はハイネかリルケ
垂れた前髪をかき上げ
入魂さながらに
吟ずる詩集は啄木か中也
そのような私とは
別世界な「詩」ではない
そんな大それたこと
考えもしない
この世に生を受けて色々な人との繋がりの中で
愛の有無にかかわらず
もう一人の私と苦界浄土を
経てきた足跡かいてみたい
どのような言葉を
どのように絡ませたら
真実が透明感をもって
浮かび上ってくるだろうか
眉唾つけず読んでくれる人
そんな人がいたら…
今無性に詩が書きたい
 【評】真実の透明度ある詩。そんな詩を書きたいと願う背景に、まずそのように生きたいと願う作者の願望が熱く隠れています。

日報学生歌壇 下平武治選

流山市 長田史
デザートに手を伸ばしては引っ込めるこれで最後が太る原因
 【評】食後のデザートを食べようか我慢しようかと葛藤している作者の気持ちがよく伝わってきます。下句に「これで最後が太る原因」とあるのを見ますと我慢できずに手を出してしまうのでしょう。素直な歌です。
野田市 金井真美
キャンパスは今は授業中みな静か廊下や外に学生見えず
 【評】大学というところは年中学生が行き来し、授業中といえども校舎の中や外に学生の姿がまったく見えなくなったりするということは珍しいことです。作者はその珍しい風景に出会ったのでしょう。

■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。

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