読者文芸

2010年12月26日


日報俳壇 山中葛子選

香取市 小林美都
金の字を貰い金柑輝けり
 【評】中国から渡来し、「金橘(きんきつ)」「姫橘(ひめたちばな)」の漢名をもつキンカンは、熟すると金色に光る。生のまま食べてもおいしいけれど、砂糖漬けや、砂糖で煮たものは、風邪薬として珍重されてなじみ深い。まさに「金」という立派な意味をもつ「字」を自然界からもらい受けたにちがいないパワーみなぎる果実なのだ。
野田市 塩野谷慎吾
電子辞書買わずと決めし文化の日
 【評】軽くて小さくて開けばすぐに答が出てくる電子辞書は、文明のたまわりものと言えようか。しかし、ていねいにページをめくって物事を調べる辞書とのかかわり方は集中力がたかまって、答を発見する喜びもひとしおである。「買わずと決めし」の、これまでの生きかたをつらぬく決意の見事さ。これぞ「文化の日」にふさわしい歴史への愛着であろう。

日報柳壇 平井吾風選

茂原市 福田研治
逆上がり初めて出来た子の宇宙
 【評】傍目(はため)から見れば何でもない事かもしれないが、初めてできた逆上がりとはその子にとってみれば物すごい努力だったと思う…。普段見ている風景でも鉄棒から見えた視界は一段と新鮮な、初めて見る世界のようだったに違いない。原句はその感動の大きさを「子の宇宙」という表現を遣っている…。句は形だけを綴ればよいというものではなく、この原句のように常に心に入り込める句であってほしいもの…。
大多喜町 鈴木政雄
五分刻み一寸刻み国とられ
 【評】尖閣も竹島も…そして北方領土もそうだ。日本の末はどうなるのか、政府の舵(かじ)取り次第では大変な事になる…。原句はそこを鋭い感覚で斬(き)り込んでいる。しかも要点だけを拡大させた短い表現が逆に不気味さを感じさせる見事な手法だ。ウガチを利かせた正に時事吟の逸句…。

日報歌壇 大島史洋選

千葉市 佐藤展子
心配をかけてごめんねと弱音吐き母の最後の手紙となりぬ
 【評】気丈に生きてきた母が作者に弱音を吐いた。それが最後の手紙だったというところに、胸打たれるものがあります。
いすみ市 岩瀬喜美江
久々に降りたる雨に緑濃くするり肩出す青首大根
 【評】久しぶりの雨に青首大根がぐっと伸びて、緑色の肩のところが作者の目にとまったという発見の歌です。新鮮な気持ちのよい光景ですね。

日報詩壇 中谷順子選

 夜の電車
  東京都 日高櫂
秋の晴れた青い夜
夏の名残のちぎれ雲
夜の空が明るくて
町が黒く染められる
黒い町を遠くから
電車の音が走ってくる
光の帯が揺れながら
黒い町を白く斬る
乗っている時は気づかない
一本の電車のかがやきに
夜の電車のかがやきは
帰る場所があの人の
夜の電車のまぶしさは
帰る場所がある人の
夜の電車のせつなさは
帰る場所のある人の
黒い町を横切って
かがやく電車が通り過ぎる
 【評】「帰る場所がある人の」が、重なるごとに、温かな家庭の明かりが近づいてきます。

日報学生歌壇 下平武治選

浦安市 久保木茜
またあしたみんなの言葉がうれしくて次の一歩を踏み出す私
 【評】放課後の友達との別れのシーン。「またあした」と仲の良い友達と明日を約束して別れる。この一言が明日への活力になり、「次の一歩を踏み出す」ことができるのです。素直な良い歌です。
柏市 松下文香
忙しなく月日は流れて酉の市縁起担いで皆熊手買う
 【評】忙しいままに月日がたち、気がついた時にはもう酉の市になっていたと言う作者。露天商が並ぶ中、客は縁起物の熊手を買ってあちらこちらから手締めの音が聞こえて来る、そんな風景が想像できる歌です。

■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。

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