日報俳壇 篠崎青童選
八街市 緑川安英
懸命に生き一粒の露となる
【評】前回の句に「妹逝きて激しくなりぬ秋の雨」があり、令妹がご逝去されたらしい。想像だが、作者には百歳の御母堂が健在なはず。そのお嘆きはいかばかりであろうか、お慰めの言葉も見つからない。妹さんとて人生を全うして生きてこられたであろうが、露の世の一粒の露となってしまわれた。
千葉市 巻田泰治
晩秋の海の夕焼伊能地図
【評】伊能忠敬は、千葉県が生んだ最も尊敬できる大偉人である。五十を過ぎてから天文学を学び、日本全国を足で回ってあの素晴らしい地図を作製した。現代の宇宙写真とさほどの変わりがないとは、全くの驚きである。優秀な測量器具もなく、あの精巧な地図がよく作れたものだ。海に広がる夕焼け空に、忠敬の偉業をしのんでいる。
日報柳壇 平井吾風選
柏市 日下部哲好
家族より優しい声で風呂が呼ぶ
【評】風呂もハイテク化の時代。ボタン一つの操作で、好みの温度で自動的にちゃんと準備をしてくれる。お風呂が沸きましたとか、呼んでます、とかまで音声で知らせてくれるもの。まさに原句が言う、機械には起伏も無く優しい声は機械なればこそだ。裏を返せば家族からの普段の、扱われ方へのアイロニーにもなるところが原句の面白さだろう。
流山市 大竹洋
生傷を勲章にする野球帽
【評】「野球帽」という言葉で、野球少年を指す代名詞にする手法。これはほかにも小学生と言うときに「ランドセル」と言ったり、乳児を指す場合「哺乳(ほにゅう)瓶」と表現したりするような、代名詞手法と同じであり、句の中では度々遣われるようになった。作者はその辺の省略の仕方もよく心得ているようだ。ウイットのある無駄のないまとめが利いている。
日報歌壇 大島史洋選
袖ケ浦市 石井重雄
卒寿すぎついに独りの食事なり大家族の日の遠い思い出
【評】作者は九十四歳。この感慨には、胸打たれるものがあります。
木更津市 草井笑子
テーブルに置かれた短歌の月刊誌息子の気持素直にうける
【評】やさしい息子さんですね。いろんな人の歌を読んで、自分なりに鑑賞することは大切と思います。
日報詩壇 中谷順子選
慈雨
茂原市 金綱あき子
真青な空が益々青くなれば地球の体温もぐんぐん
上がってくる
暑さに悲鳴をあげている蝉
枝から小鳥声も聞こえない
車は喘ぎながら走っていく
鶏は天を仰ぎ口をあけて
雨ごいをするあすは
俄か雨があるかも知れない
予報官の言う通り祈ったら
激しい雷鳴とともに金銀にも勝る宝石がこぼれてきた
畠の茄子トマト胡瓜の艶のない顔色が変わっていく
葉脈だけ浮き出させた葉は
握りかけた手ほどくように
少しずつ開いていく
地中根は大地を掴むようにして浸みてくるミネラルウォーターを吸い上げる
仮死状態に近い命を救ってくれた宇宙からのお届け物
私同様全ての生物が安堵の
まなざしで空を見る
雷鳴の通りすぎたあと
淡い陽を浴びる草むらから微かに秋声が聞こえてきた
【評】降雨に生き返る情景が克明に描写されています。力量ある詩。
日報学生歌壇 下平武治選
我孫子市 田中栄治
先輩にチケット頼まれ授業中ネット繋いで必死に予約
【評】先輩の頼みは絶対に断れない後輩の涙ぐましい努力が想像できる歌です。結局チケットはとれたのでしょうか、先生には見つからなかったのでしょうか、少し心配になってきます。
流山市 白井真歩
みなが言うもう子どもじゃないまだ子どもどちらでもいいわたしはわたし
【評】大人と子供の狭間でどっちつかずの時期を迎えた作者の思いが伝わってきます。結句の「わたしはわたし」が、強いしっかりした作者の気持ちを表していて良いです。
■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。