読者文芸

2010年10月24日


日報俳壇 山中葛子選

成田市 香取道夫
白鳥の沼となる田を刈り急ぐ
 【評】餌付けが成功して白鳥の越冬地として知られるようになった本埜村の「白鳥の郷」が思い浮かんでくる。相手が自然の生き物だけに受け入れの準備にはさぞ緊張感が高まることでしょう。白鳥たちの営みを続けるための「刈り急ぐ」田の提供や、町おこしの「白鳥米」などの名産品をめざす、コミュニケーションの素晴らしさに感動。
富里市 佐藤和子
やんわりと妥協のできぬ唐辛子
 【評】いつの世も、心地よく折り合いがつけられない事柄ばかりなのだ。そんな日常が喩(たとえ)られている教訓のごとき「唐辛子」の見事さ。トウガラシは、天井に吊(つ)って貯えられるので「天井守」の名がある。なかでも「鷹の爪」は種とともに極めて辛い。香辛料として物の味を引き立てるなど、効き目が物を言うトウガラシなのだ。

日報柳壇 平井吾風選

市原市 布施昌子
進学塾チラシの誤字が気に掛かり
 【評】塾は絶対的信頼で厳しく指導してくれるものとばかり思っているところへ案内のチラシに誤字があったとしたら、果たしてこの塾でよいのか、親としたなら不審に思うのも当然だ…。作者の表現は、そんなところを端的に突いた皮肉が楽しませてくれる面白さだろう。
野田市 川島一行
健啖も老いに白旗半ライス
 【評】齢(とし)には勝てないというところ…。大食だった若いころのようには食も進まないし、半量でお手上げというところか…否、健康第一で、労働の少なくなった今は年相応に減らしていかねばという事かも…。作者は記載の年齢によると、私よりずっとお若い。私の場合は、食べたくてももう胃袋が受け付けないというほど食が細い。いずれにしても原句はめりはりのあるまとめが妙。

日報歌壇 大島史洋選

いすみ市 岩瀬喜美江
物忘れ多きこの頃これだけは忘れず続く夕べのビール
 【評】愉快な歌。このビールは、作者にとって格別の味があることでしょう。
市原市 倉林春夫
履物は外向けそろへて脱げば良し心もそろふ親爺の教へ
 【評】昔の教えはなかなか含蓄に富んでいて、いいですね。

日報詩壇 中谷順子選

 帰り道
  習志野市 鈴木悦子
朝のホームには
何列のもの人ひとひと
背広姿の青年が
システム手帳を開いている
隣の女性は本を読んでいる
後の初老の男性は
瞑想中かしら
それぞれの職場で一日過ぎ
またこのホームに戻る
笑顔で帰って来るだろうか
充実感の表情だろうか
しょんぼり疲れて
ごくろうさまの顔か…
そんなあなたを駅で迎えて
家路に着くまでの間
そっと肩を揉み
髪を撫でてあげている
天使のいることを
知っている人は少ない
 【評】感受性の豊かさ。日常から立ち上がろうとする願いの高さまで感じとれる作品です。細やかな感情の持ち主。二連にもう少し盛り込んでも…。

日報学生歌壇 下平武治選

流山市 白井真歩
冷蔵庫生きた化石が増殖中賞味期限はすぐに過ぎ去る
 【評】買いだめしたりついつい買いすぎたりして冷蔵庫の肥やしにしてしまうことがよくあります。作者はこの同じことを「生きた化石が増殖中」と独自の表現をしています。そこが良いのです。
柏市 鈴木拓也
待ちわびたひと月ぶりの帰郷の日変わらぬ家族に口元ほころぶ
 【評】家族と離れ住んでいると、顔をみないでいるうちに何か家族が変わってしまったのではと不安にもなるもの。その作者が帰郷し、不安が一掃された時の喜びが伝わってきます。

■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。

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